書籍「教養としての落語」レビュー

今回は教養として読むだけではもったいない「教養としての落語」を紹介します。

 

 

落語がもつ文化的な深さや豊かさを解説した書籍です。笑いだけではなく、落語から学べる人間の智慧や社会の洞察についても理解することができます。落語が初めての方も楽しめる内容になっています。

 

著者プロフィール

落語立川流真打で著述家。「本格派(本書く派)落語家」。1965年11月16日生 長野県上田市出身 慶應義塾大学卒業。1988年(株)ワコール入社も芸人の夢を諦めきれず1990年吉本興行福岡1期生オーデションに合格し所属となる。1991年(株)ワコールを退社、吉本興業も退所。立川流Aコースに入門「立川ワコール」を名乗る。2000年二つ目に昇進、師匠七代目立川談志による命名で「立川談慶」に改名、2005年真打昇進(慶應義塾大学卒初の真打)。趣味の筋トレは50歳を超える今でもベンチプレス100㎏以上を上げる。著述業は落語家として異色の20冊を超える。

引用 立川談慶公式ホームページより

 

 

教養だけじゃ、もったいない

人間の変わらない本質を教えてくれる落語。落語家さんの噺の技術。

この本は教養としての角度から落語が語られていますが、それだけじゃありません。

昨今ブームの音声配信や人前で話すことを仕事にしている方もぜひ落語を!

そのための入り口になるような本でもあります。

教養としての落語とは

  • 大物政治家や経営者にとって「人の心をつかむ術」を身につけるツールとしての落語 
  • ビジネス・ ビジネスエリートにとって、共通言語である「日本の文化・価値観」を知るツールとしての落語
  • 「人間の変わらない本質」を教えてくれる落語

落語のルーツは仏教だった?

落語の原点である「醒睡笑」は江戸初期徳川家光時代に作られた作品集だといわれています。作者の安楽庵策伝は浄土宗の僧侶。仏教の教えを庶民にわかりやすく伝えるために考えられたものでした。

最初の落語家は秀吉に仕えていた?

元祖落語家は「曽呂利新左衛門」というお人。刀の鞘を作る腕利きの職人でありながら豊臣秀吉の「お伽衆」も務めた人物です。

 

江戸時代に大きく花開いた文化

江戸時代に多くの落語が完成し、現代まで引き継がれてきました。落語が大衆に広まった江戸時代は「天災」と「火事」という死と隣り合わせの時代。そんな過酷な環境でも楽しく笑いながら過ごすために求められ、愛されました。

 

古典落語新作落語の違い 

古典落語著作権なしのカバー曲のようなもの。

新作落語はオリジナルソングのようなもの。

 

上方落語江戸落語の違い 

上方落語は、大道芸のように野外で演じられることが多かったため、派手で賑やかな演出が特徴です。

江戸落語は、幕府のお膝元なのでお座敷芸として発展しました。

 

現在落語界の4大派閥

  1. 落語協会
  2. 落語芸術協会
  3. 円楽一門会
  4. 落語立川流

 

落語の基本構成

  • 枕(噺の導入部分。江戸の風習や時代背景の解説、本文をとからめた話など)
  • 本題(メインとなる話)
  • オチ (一番重要な締めくくりの部分。オチにもいろいろな種類がある)

 

落語の登場人物 

 

名作古典落語

 

その他、日本の伝統芸能と落語の比較や、落語界のレジェンド紹介、世界の笑いとの比較など、落語の魅力がギュッと詰まった一冊です。

 

 

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書籍「春宵十話」レビュー

今回は「春宵十話」を紹介します。

1963年に刊行された数学者岡潔先生の随筆集の復刻版です。1963年当時、すでに教育と国の将来を憂いて書かれたもので、現代の問題を考えるうえでの参考になることが、随所に散りばめられています

 

岡潔

1901年、大阪市生まれ。京都帝国大学卒業。その後フランスに留学し、生涯の研究課題となる「多変数解析函数論」に出会う。後年、その分野における難題「三大問題」に解決を与えた。’49年、奈良女子大学教授に就任。’60年、文化勲章受章。’63年に毎日出版文化賞を受賞した「春宵十話」をはじめ、多くの随筆を著した。’78年没

 

この本の魅力のひとつが文章の美しさです。この文章だけで、論理の前に情緒が大切あることが素直に感じられます。
人の中心は情緒だよ、だから健全に育てないといけないよ、というメッセージが全編に流れています。

また、数学については「数学とはどういうものかと言うと自らの状況を外に表現することによって作り出す学問芸術の一つ」といっています。

情緒と教育について多く書かれているのですが、その中からなるほどなぁと思ったものを紹介します。

  • 情緒が頭を作る
  • 頭で学問をするものだという一般の観念に対して情緒が中心になっている
  •  全て成熟は早すぎるよりも遅すぎる方が良い。これが教育というものの根本原理
  • とりわけ情緒を養う教育が大切 
  • 今日の情緒が明日の頭を作るという意味で大切になる
  • 遊びに没頭するとか何かに熱中するということが大切である

しっかりとした大人になるためには、しっかりと子供時代を過ごすことが大切ということですね。

  • テレビ、雑誌、映画の影響が大きい

この当時からテレビ・雑誌・映画について憂いています。現代のSNSやインターネット・スマホなど目にしたらどう言われるのか。絶望されてしまうのだろうか。

 

 

 

 

書籍「楽園のカンヴァス」レビュー

原田マハさん「楽園のカンヴァス」を紹介します。

私が原田マハさんの著作を初めて読んだのが、「楽園のカンヴァス」

上質な大人の表現が印象的で好きになりました。

 

アンリ・ルソー最晩年の代表作「夢」をめぐるアートミステリー。
だけど、もうひとつ見えない糸が全編を貫いていて、ラブストーリーとしても楽しめます。

アートやキュレーターの仕事についても興味深く、それらの予備知識なしでも楽しめます。

ミステリーなので早く先を読みたいという気持ちと、そこに書かれている表現をゆっくり味わいたい気持ちが交互にやってくる感じです。

読みごたえのある作品でした。

 

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書籍「ルーキー・スマート」レビュー

急速に変化することを余儀なくされた今こそ、ルーキーの視点と行動力が必要です。

今回はリズ・ワイズマン著「ルーキー・スマート」を紹介します。

 

著者のリズ・ワイズマンは、リーダーシップの研究者であり、世界のトップ企業にリーダーシップを教えるエグゼクティブアドバイザーです。『メンバーの才能を開花させる技法』や『ルーキー・スマート』などの著書を持ち、リーダーには「消耗型」と「増幅型」の2種類があるという考え方を提唱しています。

 

ルーキー・スマートとは

ルーキー・スマートとは、ものごとにはじめて取り組む、という自覚がある人が示す思考・行動パターンです。

本書は、ルーキーとベテランのモードと思考パターンを、それぞれ4つに分けた上で深掘りしていく構成になっています。

ルーキー

バックパッカー→無制約

狩猟採集民→警戒と探索

ファイアウォーカー→慎重と迅速

開拓者→欠乏感と猛烈さ

ベテラン

管理人→守り

現地旅行ガイド→アドバイス

ラソンランナー→安定したペース

定住者→快適と消費

 

「管理人」から「バックパッカー」へ

バックパーカーは守るべきものがないので、自由に前向きに考えることが出来ます。

行動パターン

  1. 新しい可能性を見る
  2. 新しい世界を探索する
  3. 自分に正直に行動する

ベテランがバックパッカーの精神をはぐくむための具体的な方法

  1. 素朴な問いかけをする(新人が発するような問いをする)
  2. 過去をすべて「消去」する(実績を捨てて、再びスタートを切る)
  3. モンキートラップを抜け出す(たくさんの荷物を抱え込まないようにする)

 

「現地旅行ガイド」から「狩猟採集民」へ

狩猟採集民は必要な知識や専門技能がないので、周りの世界を理解しようと努力したり、ほかの人の力を借りようとします。

行動パターン

  1. とりまく世界を精査する
  2. 専門家をさがす
  3. 大勢の協力を得る

ベテランが狩猟採集民の精神をはぐくむための具体的な方法

  1. ルーキーだった頃の自分を思い出す
  2. 専門家のアドバイスを求める
  3. 部下にメンタリングをしてもらう
  4. 見知らぬ人と話す
  5. 地図をつくる
  6. 期間限定でだれかと仕事を交換する

 

「マラソンランナー」から「ファイアウォーカー」へ

ファイアウォーカーは自信がないので、慎重に、しかし素早く行動します。自分のパフォーマンスを点検し、フィードバックを求めます。

行動パターン

  1. 計算された小さな動きをする
  2. 素早く結果を出す
  3. フィードバックとコーチングを求める

ベテランがファイアウォーカーの精神をはぐくむための具体的な方法

  1. 最前線の現場に身をおくあなたやあなたのチームが安心して悪戦苦闘できる環境をつくる
  2. 現場に身を置く

「定住者」から「開拓者」へ

地図のない土地で生き延びるためには、探検・学習・失敗・アドリブで行動する姿勢・努力する意志が欠かせません。

行動パターン

  1. 新しいツールや仕組みをつくる
  2. アドリブで行動する
  3. 猛烈に努力する

ベテランが開拓者の精神をはぐくむための具体的な方法

  1. 新しい分野の仕事を選ぶ
  2. 「半分エキスパート」になる
  3. つねに自分を問題に縛りつける

永遠のルーキー

永遠のルーキーの資質

  1. 好奇心
  2. 謙虚さ
  3. 遊び心
  4. 計画性

豊富な経験と実績を重ねてもルーキーの思考パターンを失わない「永遠のルーキー」をめざしたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

書籍「父が娘に語る経済の話」レビュー

今回はヤニス・バルファキス著「父が娘に語る経済の話」を紹介します。

複雑な経済の概念をわかりやすく解説しているので、経済の基礎を理解するのに役立つ内容です。

タイトル通り「父が娘に」語るように書かれています。

 

 

この本は、父親が娘に向けて語る形式で進んでいきます。著者の親しみやすい語り口と興味深い事例で経済に関心がない方でも楽しみながら学ぶことができます。

 

1章

農業革命

「経済とか市場という言葉を聞くたびに、そういう話はいいやと耳をふさいでいては、未来について何も語ることはできない。」


市場とは交換の場所。市場は大昔からあった。
「農作物の余剰によって、文字が生まれ、債務と国家が生まれた。それらによる経済からテクノロジーと軍隊が生まれた。」

2章

産業革命

経験価値と交換価値は対極にある。
生産の3要素は次の3つ。

「生産手段」「土地または空間」「労働者」
この生産の3要素が突然商品になったのは何故か?グローバル貿易の影響で、農民を締め出すこと(囲い込み)による労働力と土地を商品化。その後、蒸気機関の発明による生産手段の工業化。こうして市場社会が始まった。
イギリスで起きた産業革命によるグローバル化。これにより、格差がものすごい規模に拡大した。

 

3章

「すべての富が借金から生まれる世界」

産業革命の原動力は借金。
最も生産性を上げた者が競争に勝てる。そのため新しいテクノロジーが競争優位の源泉になる。テクノロジーは高くついたので、借金を重ねなければ技術は手に入らない。借金を増やせば利益が増える可能性はあるものの、うまくいかなければ破滅が待っている。起業家の借金と利益と焦りが高まるにつれ、競争はますます過酷になっていく。
こうしてひと握りの人たちが富を蓄積する、という世界になった。

 

4章

「起業家がタイムトラベラーだとすれば、銀行はツアーガイドだ。」

起業家は未来から無限の交換価値をつかみとる。
銀行は現在の起業家が成功できるように、未来の起業家のお金をつかませる。
利益と富を生み出すまさにその仕組みが、金融危機と破綻をも生み出す。

 

5章

悪魔が潜むふたつの市場「労働力」と「マネー」

市場社会を苦しめている、労働市場とマネー・マーケットに潜む悪魔は「人間らしさ」そのもの。
不合理で矛盾した人間の振る舞いと、経済という機械をスムーズに動かしていくことを両立させるには、社会全体を考え直し、大幅につくりかえる必要がある。

6章

「自動化するほど苦しくなる矛盾」

「われわれ人間はテクノロジーの可能性を余すところなく利用する一方で、人生や人間らしさを破壊せず、ひと握りの人たちの奴隷になることもない社会を実現すべきだ。」

7章

通貨になるものの3つの条件

①腐らず長持ちするもの
②持ち運びが簡単で、小分けできる
③その魅力がコミュニティ内の全員にむらなく共有される

通貨を通貨たらしめているのは「信頼」。
中央権力による管理から全員で取引を管理する仮想通貨へ。
仮想通貨の最大の弱点は誰もマネーサプライに介入できない。そのため危機が起きた時にますます危機が深刻になる。
マネーサプライへの介入は、あらゆる層の人々に影響する。しかしその影響が公平になることは決してない。

8章

「宿主を破壊する市場のシステム」

破壊は交換価値を生み出す。
市場社会では競争して利益追求をしていくのが前提なので、人間を公共の利益を考えられない「節度のない愚か者」にしてしまう。
理性あるまともな社会は、通貨とテクノロジーの管理・地球の資源と生態系の管理を民主化する必要がある。
ただし民主主義は、不完全で腐敗しやすい。それでも人類が愚かなウィルスのように行動しないためのただひとつの方策。

 

 

こんなふうに、父親から社会の仕組み、政治や経済、歴史を語ってもらえる人は幸せですね。それが疑似体験できる本です。

 

書籍ヘルマン・ヘッセ「デミアン」レビュー

 

 

中学3年生の夏休み。部活を引退して受験勉強に専念しなくちゃいけないのはわかっているけど、なにかモヤモヤしている。心が追いつかない。そんな時に出会った小説です。

 

 

デミアン」は、ヘルマン・ヘッセによって書かれた小説で、哲学的な探求と内的な成長をテーマにした作品です。

 

どうしてその本を手に取ったのか、今では思い出せません。

とにかく買って帰った。
勉強もせずに読み始めました。
最初は取っつきづらい文章だなぁと感じたことは覚えています。
あまり共感も出来なかった。

 

鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う

『鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。 卵は世界だ。生まれようと欲するものは、 一つの世界を破壊しなければならない』 という文章に出会いました。

自分も今、殻を破壊して世界に飛び立とうとしている。 モヤモヤしているのは殻を破壊する力が足りないからだ。

そう思うと、自分のなかのモヤモヤは、霧が晴れていくようにクリアなったことを覚えています。

それからの私は、殻を破壊する力を得るために何の力が今必要なのか、何の力がこれから必要になっていくのかを考えながら目の前の受験勉強に取りくむこととなったのです。

 

良い本との出会いは人生を豊かにしてくれるんだと15歳で思えたのは本当にラッキーでした。

 

 

 

書籍「1行書くだけ日記」レビュー

日記を毎日つけて、自分の行動の振り返りをしよう。
日記を毎日つけて思考や感情の整理をしよう。

理由はなんにせよ、日記をつけようと思ってやり始めた。その後、どのくらい続けられていますか?
私は日記をつけることの大切さは実感していて、いつも「よし、今回こそ!」という気持ちで始めるものの、続かないのですよ。
最初の1週間くらいは割と長めに細々書いてしまって、その後はちょっと面倒になって、だんだん文章量が少なくなり、その日にあったことを箇条書きに書くだけになり、そのまま放置という流れ。

そんな、日記を継続したいけど続けられた試しがない、という私みたいな人間も続けられそうな本を紹介します。

 

この本の著者は、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長やLINEヤフーアカデミア学長などを務める伊藤羊一さんです。

https://www.youichi-itou.net/

 

伊藤さんは、毎日の日記と振り返りを続けることで、自分のやるべきことややりたいことを見つけて、大きく人生を変えたそうです。 

この本では、伊藤さんが試行錯誤を重ねて完成させた、簡単で誰にでも効果が出るメソッドを公開しています。 1行日記は、紙でもアプリでもカレンダーでもなんでもいいので、気軽に始めることができます。 自分の人生を今からでも後悔しないで生きたい人には、ぜひ読んでみてほしい本です。

 

✅本書で紹介されていること

  1. 1行だけの日記の書き方や振り返りの方法
  2. 気づきを行動につなげる方法
  3. 小振り返り、中振り返り、大振り返りといった3つの振り返り方法

 

 

1行日記の全体像

 

「書く」と「振り返る」の2つのフェーズ

フェーズ1  書く(やったこと)
①今日やったことを1行書く

 

フェーズ2  振り返る

②やったこと・起こったことについて、自分にとっての意味を考える

③そこでの気づきは何かを考える

④次にやるべきことを見つけたら、行動する

 

書いて振り返ることの効能

書いて振り返ることでよいことがあります。

  • より客観的に自分を知ることができる(メタ認知
  • 自己肯定感が上がる
  • 過去と現在をつなげる線が見えるようになる

 

1行日記の具体的な書き方

 

書き方

✅書く

  • 1行書くだけ→どんなに忙しい人でも毎日続けることができる
  • 書く場所は何でもいい→デジタルでもアナログでもOK
  • 書くことを取捨選択する→必要な体験を言葉にする
  • できるだけポジティブな表現で書く
  • 後で思い出せるようなキーワードを入れておく

 

✅振り返る

  • 「自分にとってどんな意味がある?」と問う
  • 「自分にとっての意味」を考えて気づいたことを書く
  • 気づきを踏まえて、とるべき行動を見つけたら書く(必須ではない)

 

✅書き足す

  • 事あるごとに読み返して、考える
  • 後から読み返して、気づいたことを書き足す
  • 何回も見直して、何回も書き足す

 

3つの振り返り

小振り返り:その日に起こった出来事を振り返る(毎日)

中振り返り:小振り返りをつなげて、共通点発見や他に応用(1週間に1度)

大振り返り:自分の目指す方向に向かっているかを振り返る(半年から1年に1度)

 

1行日記から得た気づきを行動につなげる

  • 仕事や勉強だけでなく、運動やダイエットにも使える
  • 気づきは本音を書く

続ける秘訣

習慣化は強い味方

「自分を信じて、過去を振り返り、自分を理解して、未来を考える時間をつくる。その繰り返しの時間こそ大事」

 

感想

毎日書くのは1行だけなので、自分にも出来そうと思いました。後から何回書き足してもいいので、まずはとにかく1行書くということを習慣化しよう!

 

書く前にその日の出来事の中で、何を1行として残すのかが重要だと思います。そこに、その人ならではの価値観が反映されると思います。