書籍「動物たちは何をしゃべっているのか?」

今回は、山極寿一さんと鈴木俊貴さんの共著『動物たちは何をしゃべっているのか?』をご紹介します。

たまたま観た「ゆる言語学ラジオ」というYouTubチャンネルに出演していた鈴木俊貴さんのシジュウカラの話がとてもおもしろかった!


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その流れで本書を手に取ったわけですが、動物たちの驚くべきコミュニケーション能力だけでなく、人や言語の進化や身体性など深い話もされています。知的好奇心が刺激される一冊です。

 

 

著者の山極寿一さんと鈴木俊貴さんが、動物研究を通じて人間の言語や文化の起源にも迫る対談形式の本です。

著者紹介

山極寿一(やまぎわじゅいち)

1952年生まれ。霊長類学者。

総合地球環境学研究所所長。京大前総長。ゴリラ研究の世界的権威。著書に『家族進化論』(東京大学出版会)、『暴力はどこからきたか』(毎日新聞出版)、『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』(朝日文庫)など。

鈴木俊貴(すずきとしたか)

1983年生まれ。動物言語学者

東京大学先端科学技術研究センター准教授。シジュウカラ科に属する鳥類の行動研究を専門とし、特に鳴き声の意味や文法構造の解明を目指している。

2022年8月、国際学会で「動物言語学」の創設を提唱した。本書が初の著書となる。

 

動物たちの言葉の世界

動物たちが「言葉」を持っていると思ったことはありますか?この本では、動物たちが思いのほか複雑なコミュニケーションを行っていることが明らかにされています。

例えば:

  •  シジュウカラが「ジャージャー」という鳴き声でヘビの存在を仲間に伝える
  •  サバンナモンキーが天敵の種類によって異なる警戒音を発する

シジュウカラもサバンナモンキーも天敵の種類によって鳴き方を変えている。それは環境に適応した結果であり、そこには文法や文脈なども存在する。

対談では様々な動物たちの知性が紹介されています。

 

人間の言葉の起源を探る

本書の魅力は、動物のコミュニケーションを通じて人間の言葉の起源に迫るところです。特に印象的だったのは、第4章「暴走する言葉、置いてきぼりの身体」。ここでは、TwitterなどのSNSでの炎上現象を、動物のコミュニケーションと比較しながら考察しています。

 

著者たちの研究方法

動物の言葉の研究は野外に行く必要があるという点で共通の認識があり、鳥かごや動物園に入れると鳴かなくなってしまうそう。山極さんは野生のゴリラとずっと一緒に過ごしたり、鈴木さんは鳴き声を録音して特定の条件下で再生する実験をしたり、野外の同じ環境下で長期間過ごす必要が研究には必要なようです。野外でいかに工夫して研究していくかの話が興味深かったです。

 

感想

この本を読んで、動物たちの世界がこれまで以上に魅力的に感じられるようになりました。同時に、人間の言葉の使い方についても深く考えさせられました。

「今までの研究は人間を基準にしたものばかりだった。でも動物にできてヒトにできないことも山ほどある」というお二人の話がとても印象的でした。ヒトのおごりがなく優しい語り口のお二人の対談は、知的で深く自分の視野が広がる体験でした。

動物好きの方はもちろん、言語や人間の文化に興味がある方にもおすすめの一冊です。